もひとつ聞いてもいいですか
三十路のふたりと暗殺部隊
「年取ると涙もろくなるってホントかなー?」

もう王子って年じゃないとミーは思いますが、この堕王子はそんなことを突然言い出します。
ミーはまだぴっちぴちなので、そういうこと言われても返答しかねるんですがー。
どうですか姐さん?

「ちょっと、なんでそこでアタシを見るのよ二人とも!」
「ん? なんとなく?」
「年齢的に年長者を敬おうと思いましてー」
「なんですってぇえええ!」

ルッス姐さんちょっとマジで切れてますよ、どすんですか王子(仮)。
ミーは知りませんー。

「あ、フランこのやろっ、てめぇが一番ワリーんだろ!」
「ミーは嘘とか言えないんでー」

痛いです堕王子、ナイフ刺さってますよもー!!
んなことやってたら、珍しく、とっても珍しく(大事なことなので二度言いました)、ボスさんがドアのところに立っておりました。
うわー、めずらしーです、超絶引きこもりDVマンセーなボスさんが一人でこんなところ(って談話室ですが!)に来てるなんて!
明日なんか特別ななんかあるんでしょーか? 
うわー不吉ですー! そんなことになったら逃げようと思いますー!

「おい」
「あ、あらボス! お茶でしょうか」
「ああ、入れろ」
「ちょっと待ってね!」

姐さんがいそいそとキッチンに引っ込みます。
背中になんかハートマークとか見える気がするのがミーの気のせいでしょうかー? 
ボスさん、なんだかお疲れのよーです。
めずらしーですねー、いつも寝てばっかいるのに(ほっとくといつまでも寝ているなんてどんなぐーたらぶりなのか、ミーも驚いてしまいます!)。
そんなに疲れるようなこと、なんかしてるんでしょーか? ミーは残念ながら思いつきません。

「あ、そだ」

堕王子がグリッシーニをバリバリ齧りながらなんか言い出します。
堕王子が口を開くとろくなことありませんが、ミーはつい耳を傾けてしまいます。

「そーいえばさー、最近スクアーロが泣いてるのみたことねーんだけど、ボスはある?」

……なんなんでしょうか、この質問。それボスさんにわざわざ聞く必要があるんでしょうか。

「カスのか?」
「そ。そーいや先輩ももう三十代だしー? 年取ると涙脆くなるっていうじゃん」

毎度ながら堕王子のボスに対する対応はすごいとミーは思います。
そこだけはミーは真似できませんー。
内容がちょっとアレでコレなのはこの際少し脇に置きますけどー。というかアホのロン毛隊長がこういうときには格好のネタになるのは、もうしょーがないと最近ミーは思いました。あのヒト基本的にいろいろ、人間としておかしいので。

「あいつがひいひい泣くのは昔っからだろ」
「へぇ? そうなんだ?」
「そうだろ、だいたい―――」

何か言おうとしたボスさんが、少し考えて結局、何も言わないで黙ってしまいました。
堕王子はひたすらニヤニヤしています。
ああ、なんだかミーの脳内で単語の意味が違う意味に聞こえました。
たぶん堕王子も同じなんじゃないかと思いました。うわーサイテー。

「今朝は珍しく目が赤くなかったけど、泣いたんじゃねーの?」
「あいつが泣かないときなんかねぇだろ」

えーと、それってどういう意味なんでしょーか。
ミーはこれ以上聞きたくないのでこのままこの部屋をそっと出て行ってもいいでしょーかー。
ルッス姐さんがちらりとこちらを見るんですが、それは出て行けってことで……ああ、逆ですか。がっかりー。

「人の顔見るとビービー泣きやがって、まったくしょうがねぇ」
「そんなにしょっちゅう泣いてるんだ? センパイ」
「こないだは」

ボスがはぁ、とため息をついた。疲れている理由ってそれだったんですかー、あああミーはあんまり聞きたくありません。でも聞きます。

「一緒にDVD見てたら先にボロボロ泣き出されて、……終いに泣きすぎてすげぇ顔になった」
「うわー、それすげぇ!見てみてー」

そう言って堕王子はゲラゲラ笑ってソファにひっくり返りました。
ボスは疲れたように背もたれにどかっと背を預けてます。
姐さんがお茶を沸かして持ってきてくれました。ナイスフォローです。さすがです。グッジョブですー!
「なく」ってのがどっちの意味でもイヤですが、DVD見て泣き出すロン毛隊長なんてこの世の神秘ですー。ミーには想像できませんー。
しかもボスさんにため息つかせるってどんだけなんでしょーか、……駄目です、ミーの想像力の限界を超えています。
さすがにボンゴレ特殊暗殺部隊ヴァリアーはミーの想像の範疇を越えています。

「相変わらずよく泣くよなー、センパイ」
「泣き喚いたあとはフツーに怖ぇぞ」

だんだん二人の会話が異次元の言葉に思えてきます。よく泣くってマジですか、それどっかの幻影じゃないんでしょーね? 
というか本当にお二人のお話の対象者ってロン毛隊長でいいんでしょうか。なんかの幻術でも使っているんでしょうか。

「フランちゃんもいらっしゃいよ、お茶のおかわりいるでしょ?」
「あー、いただきますー」

…すいません、ミーは好奇心旺盛な若者なんです。
年寄りの思い出話は大変ウザいですが、ミーの知らないおもしろそーな話を聞かないという手はありませんー。

「アホのロン毛隊長でも、泣くときは泣くんですねー」
「そうねぇ、スクちゃんボスの前だとしょっちゅう泣くわねー。かわいいじゃない、そういうの! それもボスの前だけなのよぉ、愛らしいと思わない?」

すいません、ミーはその意見に同意できませーん。
あんなガサツで声がでかくてうるさくてバカでアホなロン毛隊長を、そんな言葉で表現するなんてさすが、姐さんはすげーです。ヴァリアーに長年いるだけのことはありますねー。
でも話は聞くので堕王子、もっと暴露しちゃってください。
ミーはすっげー楽しいので。
2009.6.8
ブログから再録。なんの映画見てたのかなー。
(ブログ収録2009.5.

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