パパラッチジャパン!
1・ネズミの国で

「この前すっごいカップル見たのようぅ京子!」

久しぶりに花ちゃんと会った。
花ちゃんは高校が別々になってしまったので、今日は久しぶりに会って買い物して、少し疲れたのでお茶してるとこ。
新しく出来たカフェは内装も綺麗で、名物のクリームチーズケーキが絶品なの。
ハルちゃんと一緒に食べて、おいしくて死ぬかと思ったんだ! 
ハルちゃんは有名なお嬢さん学校に行ってるんだけど、ケーキ情報を交換しあってるの。
時々学校帰りに待ち合わせてケーキ屋さんはしごしてるのよ。

「そういえばこのまえディズニーランド行って来たって言ったよね?」
「そう! ホントは行くのどうしようかって思ったんだけど、親がスポンサーになってくれたんで、つい。
 町内会の集まりだったから年寄りばっかりかと思ったけどそうでもなかったわー! 
 でさでさ、それはいいんだけど京子、あたし、すごいカップル見ちゃったんだ!」
「そうなの?」

基本的に花ちゃんは自分の恋のほうが重要で、あんまり他のカップルがどうとか言わない人。
彼氏が欲しい〜とか言いながら、結局私の呼び出しに付き合ってくれている。
男の人の視線を集めているのに、あんまり自覚がないのも花ちゃんらしい、かも。

「花ちゃんがすごいっていうんだから、すごそうね。どんななの?」
「もうすっごい美男美女だったのよぉ!!!! 
 あれ、たぶん外国人だと思うんだけど、すっごい背が高くて、超がつくド・ハンサムとすっごい美女のカップルだったわ〜!
 凄かったのよう、目が潰れるかと思ったわ!一緒にいったママも、パレード撮るふりしてこっそり写真撮ってたもん」
「そんなにすごかったんだ?」
「すごかったわ〜。列に並んでいるときはずっと手をつないでるし、目が合うと二人でにこにこ微笑みあうし、彼氏はちょっと顔に傷とかあるんだけど、それがこう、ちょっと笑うともうたまんないくらいセクシーなのようぅ! 腰砕けるかと思ったわ、危険な大人の魅力満載で!」
「は、花ちゃんがそんなに言うなんて、よっぽどハンサムだったのね?」
「そうなのよ! もう大人の男の魅力っての? 体格もいいし、少しネクタイ緩めてるのもかっこいいしさぁ…。それにその彼女ってのがもう! これがまた絶世の美女でさ!!」
「そんなにすごかったの…?」
「すごかったわあ!」
 花ちゃんはそういいながら、携帯を出して私に見せた。
「あんまり写真じゃわかんないと思うけど、実物はこの十倍くらいかっこよかったのよ!」
「―――――?」

花ちゃんが見せてくれたのはあきらかに勝手に写真撮った、という構図で撮られたディズニーランドの一般の列。
その中から頭ひとつ飛び出した二つの顔は確かにものすごく目立っていた。
黒髪と銀の長い髪、背の高い、スタイルのいい、二人の外国人の―――。

「花ちゃん……これ………」
「もうすっごいラブラブだったのようぅ! 時々顔近づけてひそひそ話ししてたり、キスしてたりしたのよねぇ……。それがもうすごい自然で、似合ってて…映画でも見てるみたいだったわ〜、今も思い出すとうっとりしちゃう……」
花ちゃんはどこか遠くを見ながらぽやん、とした顔をする。花ちゃん、ヨダレたれてるってば。
「確かにホント、すっごいかっこいいね!」
「でしょでしょ? 京子いるなら送ろうか、これ」
「うん! こんな小さい写真でもわかるよ、すっごい美男美女さんね…あ、肩抱いてるんだ?」
「そ・う・な・の・よ! 彼のほうが彼女の肩にこう……手を! 自然に回して、パレードの間中、周りの人ごみからかばうようにしてるの……彼女さんがこう、なんかいうと彼氏さんと目を合わせてちょっと笑ったりしてさぁ、……大人同士のカップルってああいうんだな〜って思ったのわ。やっぱり外国人だからかなぁ?」
「へぇ…なんだか自然でいいわね、そういうの。うらやましい」
「そうよねぇ…あたしもママもうっとりしちゃってねぇ。列に並んでるの全然辛くなかったのよね」
「楽しかったんだね、花ちゃん」
「まぁねぇ。あ、これお土産よ」

そう言って花ちゃんがお菓子を渡してくれて、私たちは写真の交換などをしながら、休日を過ごしたりしたのだった。




2・みんなで紅茶の時間


「見てください、ハルちゃん、ビアンキさん! この写真! 花ちゃんが送ってくれたんです!」
「なにかしら京子」
「なんですかぁ!?」

はひっ、京子さんが何か写真見せてくれますぅ! なになになんでしょう???

「ふぁっ、すすすすすごいですね!!! なんですかこれは!!!」

ひー! すごいです!!! 京子さんったら!!!

「…あら……」

京子さんはとっても嬉しそうに携帯の写真を見せてくれましす。
写真は人ごみの中から頭一つ飛び出した、すごい美男美女のカップルさんのものでした。
彼女さんがすごいサラッサラの銀の髪をなびかせていて、彼氏さんにそっと肩を抱かれてパレードを見ています!
ひゃー、なんだかすごいラブラブですぅ!

「どうしたの、これ?」

ビアンキさんは冷静ですねぇ! やっぱり大人の女の人は違いますねぇ!
ハル、あんまりに美男美女のカップルさんなので恥ずかしいです!  見てるだけでドキドキしちゃいますぅう〜!

「この前ね、花ちゃんがディズニーランドで見たカップルさんなんですって。すごい綺麗でラブラブでだったんで、つい写真撮っちゃったって…私も見せてもらったんですけど、ホントにカッコイイでしょ?」
「すごいですねぇ…この写真でも美男美女だってわかりますぅう」
「ハルちゃん、わかる?」
「わかりますよぉ! ほんとにラブラブですねぇ!」
「でしょう? なんだかとってもステキだなって思って…。花ちゃんに無理言って送ってもらったの。花ちゃんもかっこよかった、ステキだったわ〜ってうっとりしてたわ。彼氏さんが本当に花ちゃんの理想の男だったんですって」
「はひ! 花さんってデンジャラスですねぇ! こんなカッコよくてワイルドな彼氏さんみたいな人が好みなんですかぁ??」
「そうなのよ、花ちゃん大人の男が好きなの」
「アダルトですねぇ〜」
「そうね」
ビアンキさん、どうしたんですか? なんだか思いつめたような顔をして。
「だいたいオトコとオンナじゃ精神年齢が10歳は違うわ。オンナが自分にふさわしいオトコを求めるなら、10歳くらい年上じゃないと、ホントはつりあわないものなのよ」
「そうなんですか〜!」
はひっ、初耳ですぅ! メモしておきますぅ。
「本物のオトコは心が大人じゃないと駄目なのよ。そういうオトコはそんなにいないわね。…リボーンは別よ」
「はひ! ビアンキさんのご指南、アダルトですぅう」
「…京子、この写真、いい写真だわね。あたしにも送ってくれるかしら?」
「え? …あの、でも……知らない人の写真だし…」
「あたしもこんなきれいなカップルの写真、お守りに持っていたいわ。駄目かしら?」

ビアンキさんはボンキュッボンなナイスバディな美女なのに、そんなことを思うことがあるのですかねぇ? 

「はいはいはい! ハルも欲しいです!」
「ええ〜…、ハルちゃんもなの〜?」
「美男美女を見て勉強します!」
「そういうもんでもないと思うけど…」
「おねがいします!」

はひっ! 京子ちゃんから送ってもらいました。ひょおおお、ハルの携帯だと京子ちゃんのと色が違いますうぅう! 
うわー、この彼氏さんホントかっこいいですわぁ…! どこかのファッション誌から抜け出てきたみたいですぅ!
…なんだかこのカップルさん、どっかで見たことがあるような気がするんですけど…どこだったんでしょう? でも、ハルさんがこ――んな美男美女を見逃すわけがありませんから、きっと気のせいですね!

「届いたわ、ありがとう。京子、もう一杯紅茶いる?」
「あ、お願いします」
「ハルにも入れてくださいぃい!」

ビアンキさんの入れてくれる紅茶はおいしいですぅ! ちょっと刺激的なのか、飲むと舌がびりびりしますぅ!!



3・レディお手をどうぞ






「どうしたの母さん、妙に機嫌よくない?」
「あらツナくん、わかるかしら? ふふふ、今日母さんイイモノ見ちゃったのよ!」
「……なんだかあんまり聞きたくないし聞かないほうがいいような気がするんですけど!」
「そんなこと言わないで聞きなさいよ、ツナくん!」

「……聞きたくないけど聞くよ。何があったの?」
「そうなのよ、聞いてよツナくん! 今日ね、スーパーでママ、すごいカッコイイ男の子に《マダム》とか言われちゃったのよ〜〜!!」
「《マダム》……?? なにそれ!」
「やだ笑わないでよ、ホントよ!  お店に出ようと思ったらドアを開けてくれたのよ! すごい背の高い男の子でね、かっこよかったわ! 
 低い声で《マダム、大丈夫ですか?》って……重い荷物を持ってくれたの! しかもすごくスムーズな手付きで……。ツナくんもあれくらい出来るようになりなさいよ」
「えー? そんなこと急に言われても、恥ずかしいじゃない。ヤダよ、俺」
「…恥ずかしいことなんてあるものですか! あれくらい普通よ、フツー!
 背が高くてかっこよかったわぁ…手の平になんだか火傷したみたいな傷があって、『あら、怪我してるのね』って聞いたら、『古傷なので気にしないでください』って…あんなにはっきり跡が残るなんて、どんな大怪我したのかしら…えらいわねぇ」
「そんなにすごい怪我だったの? 怖い人じゃなかった?」
(ヤクザとかじゃないよねそれ!?)

「そんなことないわよ。そりゃ確かにちょっと目が怖いかなー…? って思わないでもないかもしれなかったけど。あんな綺麗な色だったんですもの、コンタクトでも入れてたのかしら?」
「へー、何それ。赤い目だったりして?」
(まさかね…)

「あら、ツナくんよくわかったわね! そうなのよ、うさぎさんみたいに真っ赤な目をしてたのよね。
 コンタクトかな? って思ったんだけど、じっと見てたら『生まれつきなんです』って答えてくれて…悪いこと聞いちゃったわ、じろじろ見てて気を悪くしたのかしら……」

「……へ、へぇ………珍しいね?」
(まさか、まさかね)
「あんな風にかっこいい男の子になってね、ツナくん!」
「……考慮します……」
(まさか日本にいるわけないよね…?)







4・めぐり巡るなにか

「ツナ〜おはよっ!」
「あ、山本くんおはよう〜」
「おっす」
「獄寺くんもおはよう!」
「なぁツナ、これ見てくんね?」
「……なに?」

(激しく嫌な予感がするんだけど)


「これなんだけどさ、この写メ」
「俺見たくないなー、…なんて」

(激しく嫌な予感がひしひしとするんだけど)

「どうしたんですか十代目? どこか具合悪いんですか?」
「…そんなことないよ、ただなんか見ないほうがいいかなー、って…」

(だってこれは僕の直感が見るなって言ってるんだけど!激しく!)

「そんなことないのな! ツナにはこれ、見てほしいのな」
「なんだよ、俺にも見せろ」
「そだな、獄寺も見れば確認できるかもしれないのな」
(なんでそこで獄寺くんに見せようとか思うのかな、山本くんは)

「…………」

「…………」

「……………………」

「…………ツナ、なんか言ってくんね?」

「…はっ、オレ、今完全に意識なくなってたよ!  山本、それしまって早く学校行こう! ね!!」
「そうですね遅刻しますよ十代目」
(獄寺くん目が泳いでるよすごい棒読みだよいまの)
「おいおい! 二人してシカトすんなよ!」

「俺は何も見てないし知らないし目にしてない!!

 だから山本くんもそんなもの見せないでぇええええ!」



「ってことはツナもこの写メに写ってる

 デレデレしたバカップルの片方がザンザスだって

 思ってるってことなのな!!」

「ていうかその相手がスクアーロだってことはスルーか、山本ォ!」



「そーゆー問題なの二人とも!?」












5・土産話がお土産です


う゛ぉお゛ぃいいい! 土産だぜぇええ

「戻ったぞ」

「おかえりなさい、二人とも! ひさしぶりだったんじゃないの、日本は」
「どうだった? 王子に土産ない?」
「おう! ちゃんと買って来たぜぇええ」
「うしし! すっげ、ちゃんと頼んだもんじゃん! お使いちゃんと出来たんだな、センパイ!」
「うっせぇぞぉ! そんくらい余裕だぁ!」
「まぁまぁ喧嘩しないの、二人とも。楽しかった?」
「たのしかったぜぇいい!」
「悪くない」


「しししっ! ねぇねぇボス、日本ってこえー国だねぇ!」
「……? なんだ?」
「なんだぁ? なんかあったのか、ベル?」
「日本のケータイってこえーよな! 写真撮るのちょーカンタンだしさー。日本人ってなんであんなに写真撮りたがるんだろーねぇ?」
「おめぇ何がいいてぇんだよ? あ、レヴィ、頼まれたDVD、これでいいんか?」
「貴様にしてはちゃんと買えたようだな」
「ボスが店員に聞いて買って来てやったんだぜ? ありがたく頂戴しろよぉ」
「貴様がしたわけではあるまい。ありがとうございます、ボス」


「ねぇスクアーロ、これってさ」
「………なんだぁこれ!?」
「私にも見せてよ、ベルちゃん! ……あら、…あらあらあらあら………」

「ボスとセンパイだね!」

「…………………………」
「…? どうしたカス、…ん?」
「ボスボス! これボスでしょ! すっげかっけーね!」
「……なんだこれは」
「これボスとセンパイだよね? 何こんなとこで遊んでるんだよー! ずっりー」
「気分転換だぁ!」
「カスがアホヅラさらしてやがるな」
「ディズニーランドいいな! 王子も行きたい〜」
「おめぇは無理だな。辛抱できねぇ」
「そんなにすごかったの?」
「あ゛あ゛すげぇぜぇええ! なんであんなすんげぇ行列に耐えられるんだぁ、日本人は!? どこ行っても人がバカみてぇに並んでいるんだぜぇええ」
「そういや幽霊屋敷ではおまえの悲鳴が一番うるさかったな」
「だってありゃ反則だろうぉが! 幽霊の出来がハンパねぇんだよ!」
「あら、そういうの駄目だったかしら、スクちゃんって?」
「仕掛けがこまけーんだよ。日本人らしいちゃーらしいとは思ったがなぁ」
「思わず飛びついてきたのには驚いたがな」
「しょーがねーだろ! 一緒に座ってるんだからよぉ!」
「ガタガタ震えてる姿はちったぁ可愛かったな。前のブースの女が目ぇひんむいてたぜ」
「そういうことは早く言えぇええ」
「まぁ…ご馳走さまねぇ」
「む…さすが日本だな、貴様をビビらせるとは」
「ねーねーこれパレードの時? 二人してすげーぼけっとしてるけど」
「だと思うぜぇ」
「カスがアホな顔してんのはいつもだろ?」
「というかなんでこんな写真撮られてるの? 二人とも気が抜けすぎ!」
「あ゛あ゛? んなところで気を張ってられるかぁ!」
「ベルちゃん、せっかく人目のないところでイチャイチャしてるんだからしょーがないでしょー?」
「人目があろうがなかろうがボスと先輩がイチャついてるのフツーじゃね?」
「それもそうねぇ」
「そこで納得すんなぁあ゛あ゛!」
「そもそもなんでその写真ベルちゃんが持ってるの?」
「あー? 日本にいる俺のドレイが送ってきたんだよ。なんでも友達のなんとかが、すっげぇ美男美女カップル見たって大騒ぎしてたらしーぜ?」
「まぁ間違っちゃいねぇな」
「俺ぁ美女じゃねぇぞぉ! ボスは美男だけどな!」
「そこが問題なのかオマエ…」
「当然だろうぉ?」
「あー………。こんなに顔出しちゃってどうすんの二人とも」
「どうせどんなもんすぐに消しちまうだろ」
「だと思うぜぇ。通りすがりの人間なんざ撮ったっておもしろくもねぇだろ」
「そこが問題じゃないんじゃないのふたりとも」










6・ぐるっと回って一回転





「なぁなぁスクアーロ、こないだディズニーランドでザンザスと手つないでたってホント!?」

「なんでそんなことをオマエが知ってるんだぁタケシィイ!」

「二人がラブラブチュ―してたって写メ貰ったからさ! 今すげぇ女子の間ではやってんだぜ、俺のクラスで

「じょーだんだろぉ……」


2008.12..〜2009.1.
拍手ログ。ちょっといくつか直しました。
日本でバカップル満喫するザンスク。あの二人に面識ない人を探してみたんだけど結構難しい…。
北欧〜ドイツあたりの人って女の人ががっちりしてるので間の格好してると区別つかないんだけど…私だけか?
この間の話を書くべきかどうか…。

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