いまさら聞くのもなんですが
 
「姐さんー事件ですー」
「あらっ、どうしたのフランちゃん!」
「事件ですったら事件ですー」

ミーはヴァリアーの霧の術者です。フランといいます。この変態しかいない変態部隊に、ほとんど拉致られるよーな状態でつれてこられてから、もう…、えーと、…三年くらい?がたちます。たぶん三年だと思います。よくわかんないです。ミーは毎日仕事してるだけですので、あんまりそーゆーの考えたことありません。
霧の守護者は顔色が変わらない、判らないのがデフォルトです。幻術は精神力の勝負なので、術者の感情の動きがそのまま、術の強弱に繋がってくるからですー。感情が顔に出たら相手に読まれてしまいますので、負けちゃいます。幻術の勝負はたいへん精神的にエグいですし、ぶっちゃけ真っ向勝負するよーなアホな術者はいませんー。騙してナンボの世界ですので。
だからー、ほとんどの術者は、自分の表情を他人に悟らせないよーにします。よーするにみんなヘンタイってことですねー。ボンゴレの守護者なんかヒドいもんですよー。あれはカモフラージュしてるわけじゃなくて、まっとうにヘンタイなだけだと思ってまーす。普通の生活したことがないんだから、しょーがないと思って生温く無視してまーす。それもヴァリアークオリティでーす。
ミーですか? 
ミーはまだまだ若輩ものですので、フツーの青少年ですがー。

それにしてもヴァリアーってところはおもしろいところですー。ヘンタイばっかりなのでミーが一番普通の人間に思えますー。なんといってもボスとその副官がデキちゃってるってのがスゴいですねー。基本的にホモばっかりでーす。暗殺部隊だから別にいいのかなーとも思いますー。生産的でもいいことありませんもんねー。
冒頭に述べるようなことがありましたのでー、せっかくだから人にも話しようと思ってミーは談話室に行きました。誰かいればいいですしー、いなかったら何もしないで部屋に戻ればいいです。今日はオカマの姐さんと、ゲッ、堕王子がいます。堕王子、からんでくるのでめんどくさいですー。

「なんだよおまえ」
「堕王子いたんですかー。ルッス姐さんお茶くださーい」
「いいわよぉフランちゃん。で、どうかしたの? またボスがなんかした?」
「スルーかよ! ていうか『また』ってなんだよ」
「だってそのままの意味だもの」
「そうでーす。堕王子とうとう頭イカれちゃったんですかー」
「堕は余計だっての!」
「はいはい仲良くするのはいいけど話が先よぉ〜、どうしたの、フランちゃん?
 またスクちゃんがボスに膝だっこでもされてたの?」

ルッス姐さんの入れてくれるお茶は超おいしいでーす。お菓子もとってもおいしいでーす。ここで出るお菓子は半分くらいは姐さんの手作りでーす。毒殺予防らしいでーす。ヴァリアーはたっくさん仕事をしているので、たっくさん恨みを買っています。いまはとっても少数精鋭なので、一人でも欠けると大変のだそうですー。まぁルッス姐さんがお菓子を作るのはそういう理由じゃないのかもしれませんけどー。
それにしても堕王子、うるさいです。ミーはルッス姐さんに話そうかと思ったんですけどー。
そうそう、堕王子に絡んでいる場合じゃありませんでした。今日はミー、久々にすごいもの見ました。

「それは何度も見ましたー。今日は違いますー。ボスちゃんの膝に隊長さんが頭乗せて寝てましたー」



「あらいやぁん」
「ゲッ」
「ゲロッ」

相変わらず姐さんは小指をピンとたててぐねぐねと踊るように身をくねらせます。気持ち悪いでーす。今日は特にキモいですー。
王子は固まってました。びっくりしたんですかー? ちょっとミー、意外ですー。

「なにそれ、そんなことやってんの、ボスと先輩」
「そうよぉ。ベルちゃんは見たことないの?」
「あー、俺それはねぇなぁ。ボスが先輩の膝枕で寝てたとか、ボスが先輩をだっこして寝てたの見たことがあるけど」

……堕王子、さすがに年齢ヒトケタの頃からあのクソボスさんとアホ隊長とオツキアイしてただけのことはありますー。
今ちょっと感動しました。すごいですー。
ミーはとてもじゃありませんが、今堕王子が言った場面を想像することが出来ませんー。想像を拒否しますー。

「そのときちゃんとスクちゃん服着てた?」
「膝枕は普通だったけど、抱っこしてたときはネクタイ外してたかな〜? ボスも先輩もすげーアホな顔してた」
「ま☆」

姐さんが顔を赤らめますーはっきりいってキモいですー。何そんな純情ぶってるんですかー姐さーん。そんなの見慣れてるんじゃないんですかー?

「で、なに見たの、またってことは前にも見たってことかよー」
「はーい、見ましたー。ロン毛隊長、ボスさんの膝の上でだっこされてましたー。ミーがいる間中、ずっとそこで抱っこされっぱなしでしたー」
「うわぉ! なんでそれ俺に教えないんだよ」
「堕王子はいませんでしたのでー」
「ええっ!? ちぇ、俺がいないときでも見計らってんのかよ!」
「一応気を使ってるってことなんですかねー、あの二人も」
「あらぁ、見たいのぉ、ベルちゃん」
「見たくねーよ!」
「そう。んで、なぁに、またそんなことしてたの?」
「してましたー。今日はアレでしたー」


今日もミーは報告書を出しに行ったのですー。この前の仕事の報告書は終わったんですが、ボンゴレの本部の人がもう一枚だせって言うんですー。前の報告書はボスさんが読んで燃やしちゃったのでもうありませんので、消した記憶を引っ張り出して書かなきゃいけないので大変でしたー。でもミーはまだ若いので記憶力には自信がありますのでー、大丈夫ですー。
そんでもって報告書を出しに行きましたー。毎回ボスの部屋のドアを開けるのは緊張しますー。
ボスさんだけならいいんですけどー、アホのロン毛隊長がいると、大抵なんというかー、…そうです、たいへんイカガワシイことになってることがありますのでー。
ミーはまだ未成年ですので、いくらなんでもまぐわっている現場を見るようなシュミはありませんー。勝手にやってろってカンジですー。
ロン毛隊長は声が大きいので、いくらなんでもまぐわっている最中はミーでもわかりますー。あ゛んあ゛んうるさいんですー。聞いたことあるのかって話ですが、聞いたことがない幹部はいないんじゃないんでしょうかー。ですよねー、姐さん?

「それは言わない約束よw オホホホホ」
「あー、確かに先輩声でっけーもんなぁ、あれで抑えてるつもりらしいけど、ぜんっぜん駄目だしなー」
「しょうがないわよ、それがいいんじゃないのかしら。喘ぎ声で興奮するタイプのオトコもいるわよぉ〜。スクちゃんがそうやって啼いてるのがボスにはいいんじゃない?」
「皆さん聞いたことあるんですねー」
「隠さないもんなー」
「そうよねぇ。いいじゃない、セックスは大切よ! 愛は大事よぉ、お肌も綺麗になるしねぇ〜♪」


まぁそれについてはミーも問題ないと思いますがー。
話を戻しますがー、そんでもって部屋に行ったんですよー。
ボスはいつもの通りでした。なんかすげー静かだったので、誰もいないのかなーって思ってたんですよねー。隊長さんがボスさんの部屋にいて、静かにしてるときなんてまず、ありませんからー。
ボスさんは相変わらず部屋の一番奥の暗いところにある机に向かって、えらそうにふんぞりかえって座ってました。今日は隊長がいないなーと思って、ミーはちょっと安心してました。前に見ちゃったことがあったんで、ボスさんに報告書を出すときはとっても緊張しますー。違う意味でー。
報告書ですー、と言えばボスさんはまた手を伸ばして持って来い、って感じです。それくらい口に出してほしいもんですー。言わないのがなんだかイヤラシイですねー。
そんでもって、しょーがないので報告書をせめて手が届くところまで持っていくかと思って近づきました。
ボスに報告書渡すと、その場で確認始めたんですねー。まぁ、いつものことですけど。
ボスさんはいくつか不明瞭なことについて質問してきて、ミーはそれに答えたんですがー、その間、ミーは暇だったので、答えながらあたりを見回してました。ボスさんはこんな暗いところで仕事してて、目が悪くなんないんでしょうかねー。

「あら、それはアレよ、ボスはほら、目が赤いでしょ。私たちよりずっと、紫外線に弱いみたいなのよねぇ。あんまり明るいところで文字を読んでいると、網膜の奥の血管が痛んで、よくないんですって。外ではいつもサングラスしてるんだけど」
「そーなんですかー。ミーはてっきり、猫みたいに暗くても大丈夫なのかと思ってましたー。」
「さすがにそこまで人外じゃないでしょ!」

それでですねー、ミーがボスの机の近くに寄っていったので、ひょいっと横を見たんですよねー。なんかヘンな格好で座ってるなー、って思ったものですからー。そしたら、ボスさんと机の間に、ロン毛隊長がいたんですよー。
いやー、ミーもさすがにそれはびっくりしましたねー! またもや石化魔法にかかったかと思いましたー。
だって隊長ったらボスさんの膝の上に頭のっけて、床に座ってるんですよー。

「あらぁ!」
「しかも、すっげーヘンな格好で、完璧に寝てたんですー。ボスさんの膝を枕にして
「ヒュー♪」

さっきからすごい気になっていたんですが、堕王子、なんでさっきから息がそんなに甘ったるい匂いがするんですかー?
姐さんも気持ち悪いくらいドピンクのエプロンをつけているのもキモいですー。

「げっ、おめー気がついてねーのかよ!」
「なんでしょーかー」
「あらいやねフランちゃん!お手伝いに来てくれたんじゃないの!?」
「なんのですかー」
「今日はボスの誕生日なのよぉ! 暇そうだから手伝いなさい」
「そうだったんですかー。なるほどー。でもそれ、すげーめんどくさいですー」
「手伝わないと夕飯抜きよ」
「はいはい手伝いますー。姐さんの手伝いが出来て嬉しいですー」

手伝いをするのは正直面倒ですが、姐さんのケーキは絶品ですのでー、それを逃す手はありませんー。誕生日のケーキってことは、半分くらいはロン毛隊長の顔にぶつけられるのかもしれませんけどー。その前に一切れはいただきたいものですー。
あ、そうそう、そうだったんですかー。それでですかー。

「あいかわらず棒読みねぇ! で、今回はスクちゃんちゃんと服着てたかしら?」
「あー、一応、着てましたよー。かたっぽだけブーツ履いてなかったですが」
「あらまぁ!!!」
「げっ」

そーなんですよねー、机とボスさんの隙間に、そんなところになんで入っていられるのかさっぱりわかりませんがー、そんな狭いところに、あのでっかい隊長さんが入り込んでるんですよねー。なっがい足を折りたたんでちまっとしたカンジで、それがまー、ボスさんの膝を枕にして、それはそれはアホみたいな顔で、くーくー寝ているんですよー。
ミーはいったい今、何を見てるのかなー、ってちょっと本気で思いましたー。
しかもボスさん、そんなアホな顔したロン毛隊長の髪の毛を弄ってるんですよー。書類を眺めながら手が空くとすぐに、膝の上から髪の毛すくってきてー、こう、指でくるくるっとー、すんですよねー。
あ、そういえば服はいつもの隊服じゃありませんでしたねー。オレンジのカットソーと黒いパンツでしたー。靴は片方しか履いてなくて、かたっぽは少し離れたところに転がしてありましたー。あらびっくり。

「ボスさんは気にしてなかったからまぁいいかと思ったんですけどー。すっげー間抜けな顔して寝てたのには笑い出しそうになって困りましたー。ボスさんはなんだかすっごいご機嫌で、それもちょっと怖かったですー」
「そなの」
「すっごいご機嫌でした〜。ミーが隊長をじろじろ見ても、全然気にしなかったくらいなのでー」
「それみせびらかされてるんじゃねーの」
「隊長のアホ顔を見せてどうすんですかー」
「つか、先輩がボスの膝で寝てるってことをじゃねーの」
「へー? あ、なるほどー」

堕王子の言葉にミーは驚きました。内容というよりは、そんなことをあのボスさんが隊長にさせてるということにです。
そうですよねー、あの隊長さんの寝顔なんか見たことないですねー。いつ寝ているのかわかんないくらいくるくる動き回ってますしねー。

「そんでミー、ちょっと気になったんで聞いちゃったんですよ」
「あらフランちゃんったら勇気あるわね!」
「だって気になったのでー。ミーは健全な青少年なので、わかんないことは質問することにしてるんですー」
「何が気になったの?」

前に隊長が膝にのっかってるのを見ちゃいましたーって言ったとき、姐さんが「あんな重たい子のっけてて大丈夫かしら」って言ってたじゃないですかー。今度は頭だけでしたけどー、ちょっと気になったのでー、聞いてみたんですよー。


「隊長って重くないですかー?」って。


「何それ」
「勇気あるわねぇフランちゃん」

えー、姐さんが言ったんじゃないですかー、アホの隊長は薄いけど長くて筋ばっかだから重いってー。
そんな重たいの抱っこしてるなんて、ボスさんタフだなーって思っただけじゃないですかー。

「でもそれ違う意味に聞こえるわよぉ」
「ししし、確かに」
「そうですかー? …そうかもしれませんねー、あれ?」

ってことはそういう意味だったんですかねー、あれ。

「で、ボスちゃんと答えたの?」
「あー、はい。ボスさんちゃんと答えてくれましたよー。えーとですねー」


余分なものが入ってねぇから重くねぇよ。


とか言ってましたねー。たしかそうだったと思いますー。
そんなこと言いながら隊長の鼻摘んでましたけどねー。隊長ったらほがほが言いながら顔の向き変えただけで、まだ寝てましたがー。

「あらま…☆」
「へーえ………」

……姐さんも堕王子もどうしたんですかー。何ですかその生温い雰囲気はー。ミーなんかヘンなこと言いましたー?

「ちっともヘンじゃないわよぉ! というか凄いこと聞いちゃったわー、確かにこれは事件ね!」
「ボスも丸くなったなー」
「へー? それってそういう意味なんですかねー、やっぱり」
「まさか膝に乗っかってる頭の中身の話じゃねーだろー? その流れでさー」
「ミーはそうかと思ってましたー」
「おめー鈍すぎだぜ!」
「だって」


アホのロン毛隊長の頭に、ボスのこと以外入ってないなんてあたりまえじゃないですかー。


「………王子びっくり」
「フランちゃんも、ようやくわかってきたようね」

なんでそこで二人して、慈愛に満ちた眼差し(って見えませんが)でミーを見るんですかー。ミーなんかヘンなこと言いましたかー?それってすでにヴァリアーの常識じゃないですかー、違いますかー?

「違わないわね」
「違わねーな」

姐さんはそう言って、お茶のセットを片付け始めました。堕王子もお菓子をばりばり食べ終わります。
お茶会は終わりそうな予感です。ミーも最後のクッキーを急いで頬張りました。むむっ! これ、ジンジャーが利いててすっごくおいしいですー。

「じゃ、二人とも、ディナー作るの手伝ってね」
「げっ、王子もかよー! せっかくアホな顔してる隊長を見に行こうとか思ったのにー」
「野暮なことはしないのよ〜、せっかくのいい雰囲気でいるんだから、駄目よん」
「そんなこと言って、ホントは手伝いのサボろうとか思ってるんじゃないですかー」
「うげっ」
「図星みたいですねー」
「うっせ」
「そこでナイフ投げないでくださいー」

片付けが終わったらさっそく姐さんの手伝いをしなくちゃいけないみたいですー。
今日のお茶受け話、どうだったんですかねー、おもしろかったんでしょうかー?

「うーん、まあまあ?」
「流石にもう胸焼けすることはないわねー」
「最近ボスと先輩いつもあんなカンジだしなー。全然隠さないし」
「ボスも丸くなったわよねぇ」
「以外とデレだったので王子びっくりー」

それにしてもこの暗殺部隊、なんでこんなにのんびりしてるんでしょうかー。
今晩のボスの誕生日のメニューも凄いです。幹部だっていうだけでこんなディナーが食べられるのが特典といえば特典なんでしょうかー。
毒殺の心配がないのが素晴らしいですねー。

「そういえばボスと先輩ってナニしてたんかなー」
「してたんでしょ」
「? 何をですかー?」
「おほほ、フランちゃん、わかんなかったかしら」
「何がですか」
「ボスとスクちゃんはすでに一戦交えた後なのよ」
「えーそうなんですかーフランびっくりー」
「なんだよ白々しいなオマエ」
「えーだってミーは健全な青少年なのでー、んなこと判りませんですー」
「いやぁねぇカマトトぶっちゃって!」
「別にぶってないですー。でもなんでそんなことがわかるんですかー姐さん」
「あら、だってブーツ片方なかったんでしょ? 片方脱げば服脱げるじゃない」
「あー、なるほどー」


だから疲れて寝てたんですかー、ボスさんご機嫌だったんですかー。
もうお腹イッパイだったってことですかー。
餌を食べた後だったから、あんなにご満悦だったってことですねー。


「そうよぉ。ボスはいつだって、肉を食べると満足なのよぉ」
「鮫の肉が一番好きだしな」






 

2009.10.17
ボス誕! …のつもりが全然祝ってませんね…。
最初はもうちょっとエロい話の予定だったんですが、なぜかこんな展開に。おかしい。
風邪引いて寝てたので完全に時期外してますね…しかしどうなんだこれ…?


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